去る2021年10月16日・17日、2日間にわたって開催された関西中国書画コレクション研究会設立10周年記念の国際シンポジウム「中国書画コレクションの時空」報告書が刊行されました。
ネット公開もされています。
野﨑家からも資料提供しました!
URLでPDFデータに飛びます。
関係個所を簡単にご紹介。
竹浪遠氏は「田能村直入の中国絵画蒐集について―京都市立芸術大学芸術資料館所蔵作品を中心に―」において、明治13年(1880)に設立された京都府画学校の初代摂理(校長)を務めた田能村直入(1814-1907)の集めた中国絵画について考察されています。
直入や弟子たちが西日本のコレクターの所蔵する中国書画を模写した『南画津梁』(なんがしんりょう)という本に登場する龔賢(きょうけん)の「水墨山水図」が野﨑家所蔵品です。
直入は膨大な中国絵画を見て模写をし続け、かつ自らも収蔵したそうです。
南宗画の学習には先人の作品を模写するのが重要と考えたからです。
現在の京都市立芸術大学に自ら寄贈した直入の中国絵画コレクションは、南宗画の正系を学校で教育するという目標や理念が感じ取れるものなのです。
呉孟晋氏は「交友と協業のコレクション―野﨑家と森家にある来舶清人の書画について―」と題し、野﨑家と、大阪の南画家であった森琴石(1843-1921)に由来するコレクションを紹介されています。
来舶清人というのは江戸から明治にかけて来日した中国の清時代の人々です。
野﨑家にもやってきましたので、特に明治頃の来舶清人の作品が多く含まれるようになっています。野﨑家と森家のコレクションを見ると両家に共通の品もあって驚きです。
また野﨑家にとって大阪の女性南画家の橋本青江は縁の深い人物ですが、森琴石から青江に向けて、来舶清人の胡鉄梅を野﨑家に紹介する仲介を頼む手紙が発見されました。
野﨑家に残る来舶清人作品は、明治期日本の「中国ブーム」渦中のリアルな交友の中で残されたものでとても興味深いですね。
本書は関西の中国書画コレクションが題材ですが、岡山にも柚木玉邨や野﨑家役員の田邊碧堂など重要な愛好家、そして大原美術館や野﨑家というコレクターがあったことにも触れられています。研究会の中では作品そのものの重要性はさることながら、「なぜ作品が今ここにあるのか」というコレクション形成についても調査していらっしゃいます。今後の野﨑家中国書画コレクション解明についても期待です。
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